むずむず脚症候群
(レストレスレッグ症候群)とは
むずむず脚症候群(レストレスレッグ症候群)とは、脚がむずむずしたり、脚を動かしたくて我慢できなくなる、脚が痛む、かゆいなど脚に不快な症状が現れる病気です。眠ろうとベッドに入ったときや、新幹線や飛行機、映画館などでじっと座ったりすると脚の内側から不快感を覚え、脚を動かすと不快感が和らぐといった特徴があります。「レストレス」とは、英語で「そわそわする」「絶え間なく動く」という意味があります。日本には、200~400万人の患者がいるのではないかと推定されており、これは人口の2~4%にあたります。
むずむず脚症候群の男女比率
むずむず脚症候群は、女性の方が男性よりも多く発症し、男女比は約3:2であるとされています。
むずむず脚症候群の年齢比率
欧米の調査結果によると、むずむず脚症候群は年齢が上がるにつれて増えるとされています。
むずむず脚症候群の原因
むずむず脚症候群の原因は明確に解明されていません。しかしながら、特発性(原因がはっきりとわからないもの)と二次性(鉄欠乏性貧血、末期腎不全、糖尿病、リウマチ、パーキンソン病などの病気や妊娠などが原因で起こるもの)の2つに分けられ、以下の3つが関与していると考えられています。
神経細胞の異常
脳内で神経同士の連絡を行っている脳内物質のドーパミンがうまく機能しなくなることによって症状が現れると考えられています。
鉄分不足
ドーパミンの材料である鉄分が不足すると、脳内のドーパミン量が減少し、神経同士の情報伝達がうまくいかなくなると考えられています。
遺伝
むずむず脚症候群に関係する遺伝子がいくつか発見されており、同じ家族や親族の中でかかりやすいという研究結果があります。
むずむず脚症候群の症状
むずむず脚症候群には4つの特徴的な自覚症状があります。これらに当てはまる場合は、むずむず脚症候群の可能性があります。
- 脚の不快感がひどい・脚を動かしたくてたまらなくなる
- 安静にして、横になったり座ったりしていると症状があらわれる、または強くなる
- 脚を動かすと、不快な感覚が軽くなる
- 夕方から夜にかけて症状が強くなる
むずむずして眠れない!
生活への影響
睡眠への影響
むずむず脚症候群は、夜間に落ち着いているときに症状が強く現れるという特徴があります。そのため、なかなか寝付けなかったり、寝ている途中に不快感で目が覚めてしまうなど、睡眠に影響を及ぼすことが多いです。その結果、睡眠不足になったり睡眠の質が下がり、疲れがたまったり、昼間にも眠くて集中力が低下してしまうなどの生活への影響が現れます。
昼間の生活への影響
むずむず脚症候群によってイライラしがちになったり、集中力が低下するなど、家庭生活や仕事が妨げられ、生活の質が低下します。また、自分が眠れないことで、家族も眠れなくなってしまったりなど様々な影響が起こります。
むずむず脚症候群の診断基準
むずむず脚症候群の診断は、問診により行います。むずむず脚症候群には4つの特徴的な自覚症状があります。また、他の病気と区別するために、補助的に検査を行うこともあります。むずむず脚症候群は問診によって診断を行う病気であるため、症状をできるだけ正確に伝えられるようにメモなどを準備しておくと良いでしょう。
脚の不快感がひどい・脚を動かしたくてたまらなくなる
不快感が足の表面ではなく深部に起こります。両脚に不快感が起こることが多いですが、片脚にしか起こらないこともあります。進行すると脚以外にも症状が起こります。不快感は脚を動かすことで和らぎます。
安静にして、横になったり座ったりしていると症状があらわれる、または強くなる
横になったり、座ったりすると数分から1時間以内に症状が現れることが多いです。不快感によって長時間座っているのが困難となり、仕事や学業に集中できなくなることがあります。電車や飛行機に乗るのが苦痛に感じる場合もあります。
脚を動かすと、不快な感覚が軽くなる
脚をたたいたり、さすったり、動かすことによって症状が軽くなったり、治まったりします。また、脚以外でも身体のどこかを動かすことで症状が和らぐこともあります。しかし、動かすのをやめると症状が再発する傾向にあります。
夕方から夜にかけて症状が強くなる
夕方から夜にかけて症状が現れ、強くなる傾向があります。1日の中で時間帯によって症状が変化します(日内変動があります)。進行すると昼間にも症状が現れるようになります。
むずむず脚症候群の治療
むずむず脚症候群の原因のひとつとして、鉄分不足があり、症状が軽い場合は食事による鉄分の補給と、カフェインやニコチン、アルコールを控えるなどの日常生活の改善で症状が治まることがあります。また、症状に応じて薬物療法を行うこともあります。
日常生活改善
生活習慣を改善することで、症状の改善を図ります。
カフェインやアルコール、喫煙を避ける
コーヒーや紅茶、緑茶などに含まれるカフェインは、脚の不快感を強くします。また、カフェインは眠りを浅くするため、できるだけ控えるようにしましょう。飲酒や喫煙も症状を悪化させることがわかっています。
鉄分を補充し、バランス良い食事
鉄分不足がむずむず脚症候群を引き起こす原因のひとつであると考えられています。レバーやホウレンソウ、あさり、いわしなど鉄分が豊富な食品を積極的に摂取し、バランスの良い食事を摂るようにしましょう。また、サプリメントで鉄分を補給するのも効果的です。
ストレッチやマッサージを習慣にする
就寝前にストレッチやマッサージを行い、筋肉をほぐすことも効果的です。ウォーキングなどの軽い運動も効果が期待できます。
薬物療法
むずむず脚症候群の治療には、鉄剤やドーパミン系薬剤、非ドーパミン系薬剤を用います。鉄剤は鉄分不足を解消し、体内の鉄分やフェリチンを回復させることで、神経伝達物質ドーパミンの分泌を促すと考えられています。ドーパミン系薬剤(プラミペキソール、ロチゴチン、ガバペンチンエナカルビル)は、脳内のドーパミン機能を改善し、非ドーパミン系薬剤は神経に働きかけて症状を緩和します。