パーソナリティー障害

パーソナリティとは

パーソナリティとは、人格や個性のことで、特に個人に関する全体的な特性のことです。自分から見る自分と、他者から見る自分は必ずしも一致するものではなく、パーソナリティについてどこからが異常で、どこからが正常なのかを一概に決めることはできません。

パーソナリティ障害とは

パーソナリティ障害とはパーソナリティ障害とは、物の見方や考え方などが他の多くの人と大きく異なることで、社会生活に大きな支障をきたす状態を言います。パーソナリティ障害だと、周囲の人と行動や性格を巡り衝突しやすく、性格が悪い人ととらえられてしまいがちですが、性格の問題ではありません。パーソナリティ障害には大きく10つのタイプがあり、それぞれの特徴に応じてA群、B群、C群の3つのグループに分かれます。

パーソナリティ障害で
共通する3つの特徴

パーソナリティ障害の人は、対人関係に問題が起こることが多く、自分のことを他者にわかってもらいたいのに、わかってもらえないことによる疲労感や敗北感を抱える傾向があります。それに対して、他者はパーソナリティ障害の人による問題行動を受け、トラブルになったりしてしまいます。

考え方の偏りが大きい

パーソナリティ障害の人は、パーソナリティの要素である、認知や感情、衝動、対人関係に対して、強い偏りを持っています。

日常生活に支障が出ている

考え方の偏りが強いため、職場や家庭など日常生活のいろいろな場面で支障をきたします。

特定の原因がない

パーソナリティ障害を引き起こす原因は、明らかになっていませんが、発達期から成人期の初期にかけてパーソナリティ障害の兆候が現れることが多いです。

パーソナリティ障害の分類

パーソナリティ障害は3つのグループに分類された10のタイプがあります。

A群

このタイプのパーソナリティ障害は、独特な考え方や行動が特徴で、周囲から「変わっている」と思われることが多いです。統合失調症に似た特徴が見られることがあり、本人が問題を抱えている場合も少ないため、治療を受けているケースが少ないです。

妄想性パーソナリティ障害

事あるごとに他人を疑い、強い不信感や疑いの気持ちを持ちやすいです。また、自分の考えや行動を正当化する傾向があり、周囲の出来事や他者の行動を、自分に対して悪意があるものだと解釈しがちです。

シゾイドパーソナリティ障害

他者との距離があり、社会との関わりが非常に少ないです。また、感情をあまり表に出せず、孤立が多い傾向にあります。

統合失調型パーソナリティ障害

スキゾタイパルとも呼ばれ、明らかな精神疾患の状態ではないが、統合失調症には至っていない状態です。物事の捉え方が現実離れをしており、魔術的な思考のため問題があり、対人関係にも課題があります。統合失調症との関連性が指摘されています。

B群

感情の波が激しく、不安定なタイプです。また、自身に対するイメージや気持ちが不安定であり、行動も劇的です。そのため、周囲の人が巻き込まれやすいパーソナリティ障害です。

境界性パーソナリティ障害(ボーダー)

強い不安から、見捨てられるのではないかと心配し、時には妄想的な考えになることもあります。自分に全く問題のない愛情を注いでくれる人は「善」と見なし、それ以外の人は「悪」になります。そのため、これらの細やかなことで不安になったり、パニックになりやすく、相手に対して怒りや失望を時々表現することがあります。その後、相手がどう感じるか、関係がどうなるかを考えるのは難しいです。このような対人関係のパターンが続くと、パートナーや友人との健全なコミュニケーションを築くのが困難となります。

自己愛性パーソナリティ障害

他者を思いやることが乏しく、自分の良さを大きく見せようとし、周囲からの称賛や評価を強く求める傾向があります。

反社会性パーソナリティ障害

他者の権利や社会のルールを見視し、問題行動を起こしやすいです。
時に、社会の規範や法律を守らず他者の権利を侵害します。
認知行動療法や薬物療法が衝動的な行動の軽減に繋がることが多いです。

演技性パーソナリティ障害

常に注目の的(主人公)であることを求め、他者の注意を引くための行動を繰り返します。
不適切で誇張した感情表現を認めます。また、他者からの注目を繋ぎ止めるために、服従的に行動することもあります。しかし、浅薄で変わりやすい傾向があるため、対応する際は、揚げ足をとるように接せず、冷静に接するようにしましょう。

C群

不安や、恐れを抱きやすいタイプのパーソナリティ障害です。また、分類が難しいパーソナリティ障害もこの群に含まれます。日本人のパーソナリティ障害の方の多くに当てはまります。

依存性パーソナリティ障害

何かを自分で決めたり、判断することを避け、人に任せる傾向があります。そのため、過度に依存的・服従的になります。ケアをしてもらいたいという過度な欲求があるため、自分で判断する練習や、それを援助してあげることが治療の際には望まれます。

強迫性パーソナリティ障害

完璧主義であるため、自分のやり方やルール、規則に固執します。そのため、柔軟性に乏しいです。対応する際には、なるべく本人のルールを尊重してあげるのが良いでしょう。

回避性パーソナリティ障害

周りから拒絶されたり、恥をかく、批判されることを恐れます。そのため、何か問題やイレギュラーがあった際には立ち向かわずに避けてやり過ごす行動のパターンが認められます。対応する際には、本人の意思や感情を尊重し、自分が否定評価されるかもしれないという状態を作らないようにしましょう。

パーソナリティ障害の症状

パーソナリティ障害の症状は、タイプによって異なります。

A群

  • おかしな行動や考え方をする
  • 危害を加えられるのではないかなど、人を執拗に疑う
  • 人に裏切られるのではないかと常に恐怖を感じている
  • 非社交的で他者に対して無関心

B群

  • 感情や対人関係が安定しない
  • 衝動のコントロールができない
  • 他者の権利を無視したり侵害したりする
  • 暴力をふるう
  • 演技的な派手で大げさに振る舞う
  • 他者を操ろうとする

C群

  • とにかく不安で、刺激をうけそうな状況や場所を避ける
  • いつも人に依存している
  • 自分だけの考えにとらわれやすい、頑固

パーソナリティ障害の検査・診断

A群のパーソナリティ障害(妄想性・スキゾイド・統合失調型)では、統合失調症の可能性も含め、慎重に診断を進めていきます。B群のパーソナリティ障害(反社会性・境界性・演技性)では、周囲を巻き込むような派手な行動が目立つことが多いため、具体的なエピソードを元に診断を進めていきます。C群のパーソナリティ障害(回避性・依存性・強迫性)では、本人の苦痛が強いため、合併症の治療の過程で、医師との関係性が深まると見えてくる場合があります。

パーソナリティ障害の治療

パーソナリティ障害の治療では、主に心理療法を行い、医師やカウンセラーとともに、認知の偏りについて認識し、偏りのない行動ができるようにしていく認知行動療法などを行っていきます。また、心理療法は即効性がないため、心理療法の効果が現れるまでは、薬物療法を行い対症療法として活用し、症状を抑えていきます。薬物療法では、患者様の状態に合わせて、抗精神病薬や選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、気分安定薬などを用います。パーソナリティ障害の治療では、パーソナリティそのものを変えることはできませんが、治療によって、人間関係や日常生活の問題を改善することができます。