愛着障害

愛着障害とは

愛着障害とは愛着障害とは、何らかの理由で、幼少期に母親や父親などの養育者との愛着形成が上手くいかなかったことにより、自尊心や自立心、社会性が上手く育たずに成長してしまい、大人になってから他者とうまくコミュニケーションが取れなかったり、自己肯定感が低くなってしまう障害です。乳幼児期の子どもは、自分の欲求や感情をうまく伝えることができないため、不快感があるときには泣くことで養育者に伝えます。泣いて知らせたときに養育者は、必ず自分のもとへと駆けつけてきて、愛情あふれるコミュニケーションをとってくれることで子どもは安心します。ここで形成される愛着は、今後の人生の大きな土台となり、こころの発達に欠かせない要素になります。

愛着障害の原因

愛着障害の原因は、主に以下のようなものが挙げられます。子どもの頃に愛着形成がされないと、大人になってから人間関係でトラブルを起こしたり、自分の気持ちや考えを他者にうまく伝えられなかったり、他者の目を気にしてばかりで疲れてしまうなどといった生きづらさを抱えてしまうことが多いです。

  • 養育者との離別、死別などによって愛着形成を行う対象がいなくなる
  • 養育者によるネグレクト、無視、無関心
  • 身体的虐待
  • 養育者が頻繁に替わる
  • 養育者による厳格なしつけ、体罰
  • 兄弟との差別、兄弟に優劣をつけられた
  • 褒められることが極端に少なかった

愛着障害の分類・診断

愛着障害には「反応性アタッチメント障害」と「脱却制型愛着障害」の2つのタイプがあり、診断が分かれます。この2つのタイプには正反対な特徴があり、反応性アタッチメント障害の人は人に対して過剰に警戒する一方、脱却性型愛着障害の人は他者に対して過剰に馴れ馴れしいといった違いがあります。

反応性アタッチメント障害(反応性愛着障害)

反応性アタッチメント障害(反応性愛着障害)とは、人に対して過剰に警戒するタイプの愛着障害で、人に頼ることができないという特徴があります。原因は、乳幼児期に養育者に無視されたり、無関心、ネグレクトなどの不適切な養育を受けたことであることが多いです。子どもの頃に養育者に無条件に甘えたり、助けてもらったという経験がないため、どうやって誰に助けを求めればいいのかがわからなくなってしまいます。

反応性アタッチメント障害の特徴

反応性アタッチメント障害の人は、他者を信じられないため、頼れなかったり、自分の存在価値が感じられず、自分を攻撃してしまったり、感情を出せないといった特徴があります。

  • 他者を信用できない
  • 恐怖心や警戒心が強い
  • 他者の言葉に深く傷つく
  • 自傷行為がみられる
  • 嘘をつきやすい
  • 体調不良を起こしやすい
  • ちょっとしたことで酷く落ち込んでしまう
  • 自己肯定感が低い
  • いつも人目を気にしてビクビクしている
  • 感情の起伏が少ない
  • 謝ることができない

脱却制型愛着障害(脱却制性対人交流障害)

脱却制型愛着障害(脱却制性対人交流障害)とは、人に対して過剰に馴れ馴れしくするタイプの愛着障害で、無差別に人に甘えるといった特徴があります。原因は、乳幼児に養育者との愛情形成が上手くいかなかったことで、注意を引くために情動的な行動をすることもあります。初対面の人にも構わずべったりと抱き着こうとしたり、協調性が欠落しているなど、発達障害に似ている特徴があります。

脱却制型愛着障害の特徴

脱却制型愛着障害の人は、自分が示すべき愛着の範囲がわからず、知らない人にまで広範囲に愛着を求めてしまいます。例えば、兄弟ばかりをかまっている養育者に対して、以下のような行動をとり、興味や関心を引こうとします。

  • 誰にでもかまわず抱きつく
  • 周りの注意を引くために大声を出す
  • 落ち着きがない
  • 乱暴なことを言う
  • わがままなことを言う
  • 強情、意地悪
  • 嘘をつきやすい
  • 人によって態度を変えることはない

大人の愛着障害

愛着障害を持ったまま社会生活を行うことで、仕事や対人関係が上手くいかなかったり、つらい思いをしてしまうことがあります。

対人関係がうまくいかない

他者との適切な距離感を保つことが難しく、仕事などで、周りの人とうまくコミュニケーションが取れず、失敗したり、叱られてしまうといった対人関係のトラブルが起こりやすいです。また、結婚しても、家庭生活が上手くいかなかったり、子どもができても、どのように愛情を注げばいいかがわからず、時には虐待の加害者になってしまうこともあります。

情緒面が不安定

大人になってから情緒が不安定になる場合があります。他者から言われたことにひどく落ち込んでしまったり、攻撃的になったりなど感情をうまくコントロールできないことが多いです。また、建設的な話し合いができないことで、仕事や家庭生活がうまくいかないという状況に陥りやすいです。

アイデンティティの確立が困難

愛着形成がされていないため、アイデンティティを確立するために必要な自己肯定感や好奇心、積極性などの土台ができておらず、アイデンティティの確立が困難になる場合があります。アイデンティティは、自分で行う行動を考え決定する上で重要であるため、アイデンティティが確立できていないと、人生の選択や決定をする場面で苦労します。

大人の愛着障害が他の病気を引き起こす可能性も

愛着障害の人は、仕事や家庭における生活の困難さを感じるだけではなく、二次的に上記のような病気を発症する場合があります。これらの症状は適切な治療や工夫によって低減することができます。

大人の愛着障害の治療、対処法

大人の愛着障害の治療は、自分の養育者との愛着形成を再び目指すのではなく、友人や職場の同僚、恋人やパートナーなどとの良好な関係を目指して、ありのままの自分を受け入れてくれる人間関係を構築することが有効です。このありのままの自分を受け入れてもらえることによる安心感によって、感情的、衝動的にならずに対人関係を築けたり、自己肯定感や自尊心を下げずに済むことが期待できます。愛着障害の治療において最も大切なことは、安心を生み出すための環境を提供することです。