女性のうつ病
うつ病は男性よりも女性に多く見られる病気です。女性の方がうつ病になりやすい原因は明らかになっていませんが、月経周期や妊娠など、女性特有のホルモンの変動が関係していると考えられています。また、社会や仕事場で男性優位の価値観が残っていることによるストレスや、就職や結婚、出産、子育てなどのライフイベントも女性のうつ病を引き起こすストレス要因の1つであると考えられています。
女性のうつ病セルフチェック
次のような症状は、女性のうつ病の可能性があります
- 何をしても楽しめない
- 集中できない
- 憂うつで涙が出る(特に月経の2週間前)
- 人と話すのが苦痛で、休日一人で過ごすことが多くなった
- 自分はダメだと自己嫌悪したり、死にたいと思う
- なかなか寝付けない
- 何を食べても美味しく感じない、食欲が湧かない
- 頭痛や肩こり、身体のだるさを感じる
- 息苦しさや胸の苦しさを感じる
- 些細なことでイライラする、情緒が不安定になる
- 昼も眠くて身体がだるい
- 食べ過ぎる(過食)
- ちょっとした他者の言葉や態度で傷つきやすくなる
生理前の不調は、うつ病の一種?
女性は月経がはじまる少し前から、体調が悪くなったり、食欲がなくなる、イライラする、不安を感じるといった心身の不調を抱えることがあります。心の不調が強く現れる PMDD (月経前不快気分障害)や心と身体の双方に不調が起こるPMS(月経前症候群)などが代表的です。こうした月経前の不調は女性のうつとも深く関係しています。月経前の心身の反応と状態についてしっかりと理解することで心身のケアがしやすくなります。
PMS(月経前症候群)とは
PMS(月経前症候群)とは、月経が始まる3~10日程前から心身に何らかの不調が現れ、月経が始まると症状が消えるという特徴をもつ状態の総称です。PMSを経験する方は多く、日本では18~45歳の女性の平均1割程度の方が、月経周期ごとのPMSに悩まされているとされています。PMSの症状の現れ方は人それぞれで、単一の症状だけが現れたり、多くの症状が同時に現れるなどがあり、症状は200種類を超えるとされています。
PMSの主な症状
精神的症状
- イライラして人にあたってしまう
- 情緒が不安定になる
- 不安や緊張、気持ちの高ぶりといった感情に悩まされ落ち着かなくなる
- いつもなら楽しいことに興味がわかない、楽しむことができない
- 集中できない
- やる気がでない
- 相手の態度にこだわる、自分の感情にふりまわされる
身体的症状
- 疲れやすい
- 食欲が高まる、特定の食べ物が食べたくなる
- 過眠、不眠などの睡眠障害
- 乳房が張り、痛む
- 関節や筋肉が痛む
- 頭痛がする
- むくむ
- 体重が増加する
PMDD(月経前不快気分障害)とは
PMDD(月経前不快気分障害)とは、症状はPMSと似ていますが、心の不調が強く現れるという特徴があります。PMDDは月経が始まる10日以上前から症状が現れることがあり、月経が始まると症状は治まります。PMSよりも少し長い期間症状に悩まされます。
PMDDの主な症状
PMDDの主な症状は、イライラや憂うつなどの心の強い不調です。感情のコントロールが難しくなるため、周りの人と衝突することが増え、さらに強い憂うつや怒り、不安などの感情にとらわれやすくなります。わけもわからなく不安や焦りが高ぶって、パニックを起こすこともあります。
女性特有のうつ症状の出るタイミング
妊娠期のうつ
妊娠期(特に妊娠初期)はうつ病が多くみられ、約8~12人に1人がうつ病を経験しているとされています。妊娠期のうつ病は、社会的サポートが不十分なことや、予期せぬ妊娠、パートナーとの関係性などが関わっていると考えられており、妊娠期のうつ病は産後うつ病のリスクになるとされているため注意が必要です。出産をひかえた大事な時期であるため、妊娠期のうつに不安や心当たりがある場合はなるべく早く産婦人科や担当医に相談しましょう。
産後うつ
産後うつとは、出産後、ちょっとしたことで泣いてしまったり、落ち込んでしまったりなど心の不調が現れ、長期的に続く状態です。出産後しばらくの間、心の不調が続くのは、マタニティブルーズといって出産に伴う女性ホルモンの大きな変化や体力の消耗、慣れない育児などによって起こる一時的な現象ですが、ずっと続く場合は産後うつの可能性があるため注意が必要です。
更年期うつ
更年期うつとは、更年期(閉経前後の5年)に女性ホルモンの分泌が大きく揺らぎながら変化することによって、気分の落ち込みやイライラ、不眠、無気力、記憶力や集中力の低下などの症状が起こる状態のことです。更年期は、のぼせやほてりといった身体症状のほかに抑うつなどの日常生活に支障をきたすほどの強い心の症状が起こります。更年期うつは重症になることがあるため、早めに受診することが重要です。また、できるだけストレスをためないようにし、周りの人の更年期うつについての理解を深め、家事などを分担してもらうようにしましょう。
PMS・PMDDのピルによる治療の効果について
PMSは女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンのバランスの急激な変化によって引き起こされるとされています。そのためPMSは低用量ピルを用いることで、ピルによって排卵が抑えられ、女性ホルモンの変化を抑えることで、症状が軽減されます。そのためPMSは婦人科と連携して治療を行うことがあります。一方、PMDDの場合は、精神症状が強く、ピルを投与しても効果が現れないことが多いため、生活習慣の改善指導を行うとともに、抗うつ薬などを処方し治療を行います。