カフェイン中毒とは
カフェイン中毒とは、カフェインを過剰に摂取することで、中枢神経系が過剰に刺激され起こる中毒症状のことです。カフェインが多く含まれるエナジードリンクやコーヒーなどを一度に大量に摂取することで起こります。日本では、カフェインの具体的な摂取量の目安は示されていませんが、農林水産省や厚生労働省、食品安全委員会は、海外の情報などに基づいてカフェインの過剰摂取に注意を呼びかけています。
エナジードリンクとカフェイン中毒
エナジードリンクの1本に含まれるカフェインの量程度では、中毒症状が起こるほどの影響はないとされています。ある研究によると、中毒症状が起こる目安は、体質によっても異なりますが、成人で短時間に1,000mg以上を摂取した場合とされており、これはエナジードリンク7本以上に相当します。しかし、カフェインは医薬品や飲食物に含まれていることが多いため、日常的に摂取するもののカフェイン量を把握しておくことが重要です。
カフェイン中毒の原因
環境要因
カフェインを日常的にあまり摂らない人が、急にカフェインを多く摂ると、カフェイン中毒を起こす可能性が高くなります。
遺伝要因と生理学的要因
カフェイン中毒には遺伝的要因が関係しているかもしれません。
カフェインの効能
カフェインは、集中力の向上や眠気覚まし、疲労感を和らげるといった効能があるとされています。疲労がたまると生成される脳内物質のアデノシンは、脳内のアデノシン受容体に結びつくことで鎮静作用をもたらしますが、カフェインはアデノシンと似た化学構造を持つため、アデノシン受容体に結びつくことができ、アデノシンの働きを阻害して、神経を興奮させて疲労感を打ち消したり、集中力を向上させる作用をもたらします。ただし、カフェインの効能は、一時的なものであるため、カフェインの作用がきれたときには、かえって眠気や疲労感が強まるといった傾向があることもわかっています。
カフェイン濃度について
私たちが日常的に飲むことがある、カフェイン飲料は主にコーヒーや茶類です。また、エナジードリンクや、眠気覚まし用の飲料は、コーヒーや茶類よりもさらに多くのカフェインを含むものがあります。市販されている飲料の成分表示では、カフェインは100mLあたりの含有量で表記されていますが、缶や瓶で1本あたりの量に換算すると、コーヒーよりも多くのカフェインを含んでいることがあるため、カフェイン量を計算したり、1日に何本も飲まないようにしましょう。
食品 | カフェイン濃度 | 備考 |
---|---|---|
コーヒー | 60 mg/100 ml | 浸出方法:コーヒー粉末 10 g/熱湯 150 ml |
インスタントコーヒー(顆粒製品) | 57 mg/100 ml | 浸出方法:インスタントコーヒー2g/熱湯 140 ml |
玉露 | 160 mg/100 ml | 浸出方法:茶葉 10 g/60 ℃の湯 60 ml、2.5 分 |
紅茶 | 30 mg/100 ml | 浸出方法:茶 5 g/熱湯 360 ml、1.5~4 分 |
煎茶 | 20 mg/100 ml | 浸出方法:茶 10 g/90 ℃430 ml、1 分 |
ウーロン茶 | 20 mg/100 ml | 浸出方法:茶 15 g/90 ℃の湯 650 ml、0.5 分 |
エナジードリンクまたは眠気覚ましよう飲料 | 32~300 mg/100 ml(製品 1 本当たりでは、36~150 mg) | 製品によって、カフェイン濃度及び内容量が異なる |
カフェイン中毒の症状
カフェイン中毒の症状は、精神症状と身体症状があります。
精神症状
カフェイン中毒による軽度の精神症状は、緊張や興奮、イライラ、不安、焦り、不眠、多弁などが挙げられます。重症になると、精神錯乱や妄想、幻聴、幻覚、パニック発作、じっとしていられなくなるなどの精神症状が現れます。
身体症状
カフェイン中毒による軽度の身体症状では、胸の痛みやめまい、嘔吐、下痢や心拍数の増加、不整脈、動悸などの循環器系の異常が起こることがあります。重症になると、手足のけいれんや頭痛、過呼吸などが現れます。
カフェイン中毒の診断基準(DSM-5)
カフェイン中毒の診断基準は、最近のカフェインの消費量が多く(典型的には250mgを十分に超える高用量)かつ、以下の徴候または症状のうち5つ(またはそれ以上)が、カフェインの使用中または使用後すぐに発現することとなっています。
- 落ち着きがない
- 神経過敏
- 興奮
- 不眠
- 顔面紅潮
- 利尿
- 胃腸系の障害
- 筋れん縮(筋肉が自分の意思とは関係なく収縮する状態)
- 散漫な思考・会話
- 頻脈または心拍不整
- 疲れ知らずの期間
- 精神運動興奮
カフェイン離脱症状
カフェイン離脱症状とは、カフェインを毎日摂取しているなど、長期間カフェインを取り続けている状態から、突然カフェインの摂取量を減らしたり、摂取を止めたりすることで、起こる様々な症状のことです。カフェインの離脱症状として代表的なのはドクドクとした拍動性の頭痛で、身体を動かすとひどくなります。このようなカフェインの離脱症状は、カフェインを止めてから、12~24時間後に始まり1~2日後が症状のピークとなり、2~9日ほど続きます。カフェインを再び摂取すると30~60分ほどで離脱症状は治まります。そのため、カフェインを辞める際は、いきなり辞めるのではなく、少しずつカフェインの量を減らしていく方法が推奨されます。コーヒーの摂取が習慣になっており、辞めるのが難しい方は、少しずつデカフェのコーヒーに移行していったり、水出しのコーヒーにすることでカフェインの量を減らすことができます。